千本松原で千本ノック7(English translation of Bokusui's tanka7)
若竹の伸びゆくごとく子ども等よ真直ぐにのばせ身をたましひを
若山牧水『黒松』
children,
like growing young bamboos,
straighten
your body and
your mind!
Black Pine by Bokusui Wakayama
O little Children, grow up blithe
And healthy, every one of you,
And be in heart and body lithe
And upright as the young bamboo!
THE BLACK PINE by Bokusui,
tr. by Heihachiro Honda
「各行8音節の押韻4行詩」(上記研究誌の巻頭論文による)という
報国寺(鎌倉)
生前の牧水に寄す(8月24日詠)
たましひの熱きをのこの好けれども生き急ぐなよ酒は減らせよ
純米吟醸酒「若山牧水」(google search)
(All Rights Reserved)
#
by snowdrop-nara
| 2024-09-16 07:16
| 詩
千本松原で千本ノック6(English translation of Bokusui's tanka6)
白露二日目の朝露
つまらなさ手足にあふれふらふらとさまよひ歩く身体なりけり
若山牧水『白梅集』(大正6年)
はまゆう(沼津千本松原)
feeling languor
flooding from my limbs,
I wander
with unsteady steps,
it IS my body
White Plum Blossoms by Bokusui Wakayama,
tr. by snowdrop
「つまらなさ」が次世代の中原中也の「倦怠」に通じるな気がして
languor という訳語を選んだ。
不規則な足取りでさまよう牧水。「なりけり」<詠嘆>に驚きを込め
「これがおれの体かよ」とでもいうニュアンスを大文字のISで表した。
つかみどころのない不安感は、アドレッセンスの余韻でもあろうか。
(参考)
おとろへしわが神経にうちひびきゆふべしらじら雪ふりいでぬ
若山牧水『路上』(明治44年)
My limbs o'ercome by weariness,
I am a man without a role,
And wandering all but purposeless,
I am a thing without a soul
平八郎は「つまらなさ」を weariness と訳す。
languorよりも長期的で消耗した疲労感を指す語である。
「ふらふらと」から足取りよりも無目的さを読み取り
二行目と四行目は一対になってつまらなさを説明する。
(二行目の直訳)私は役割のない人間だ
(四行目の直訳)私は魂をもたぬ物体だ
思想的に行き詰まったかのような理知的な人間の悩み。
これが平八郎の牧水観なのかもしれない。
あるいは、英語という言語が引き寄せた論理性か。
身体がさまようのは、魂(soul)も役割もないからだという
理由付けは、英語圏の読者の方が理解し易そうである。
平八郎の英文四行詩訳の引用元である本多稜論文は
平八郎訳を韻律の面から論じている。
本多氏によれば、「なりけり」の<詠嘆>は
各行八音節の定型と、abab の押韻で整えた
緊張感のある文体で表現されているという。
自らも張りのある音楽性豊かな歌を詠む歌人らしい論だ。
牧水の書を見ると、まろやかで温かみのある書体である。
(「光る君へ」の若き日の道長の書体みたい?)
『牧水研究』27号には「書道専門書に見る牧水」(片山佳代子)
という論文も収載されている。
彼の文字は書道界でも好感をもって評価されているが、
独特の丸っこい文字は芸術としての「書」というより
筆と墨による「肉声」のように感じられる、とある。
牧水は変体仮名や連面体(続け書き)を用いず、
ひらがなを多用することでも知られている。
『山櫻の歌』の一首(岩波文庫所収)を下図の掛軸と比較しよう。
「紫に澄みぬる富士はみじか夜の暁起きに見るべかりけり」の
「紫」と「暁」が「むらさき」「あかつき」とひらかれている一方、
「みじか夜」の「みじか」は「短」と漢字で書かれている。
その時々の気分で自由に漢字とひらがなを組み合わせていたようだ。
書に勢いが感じられるのは、そんな即興性にもよるのかもしれない。
なお、他の歌人でも雑誌と歌集では、漢字と仮名に違いがある事が多い。
牧水は揮毫を通じて人と交流した(収入も得た)。
歌のやりとりを通じて心を通わせるように。
不安や感傷をうたっても湿っぽくなり過ぎず
朗々とした抒情性に満ちているのは、
牧水の魂(soul)の温度の高さゆえであろうか。
精神状態をこまやかに詠む姿勢は自発的というより、
窪田空穂の「心の微動」などの影響もあるかもしれない。
鉦鳴らし信濃の国を行き行かばありしながらの母見るらむか
空穂『まひる野』(1905年)
けふもまた心の鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く
牧水『海の声』(1908年)
わが庭のすがたを見せぬ鉦叩きチチ、ちち、父といつまでも鳴く
snowdrop
#
by snowdrop-nara
| 2024-09-12 19:12
| 詩
ザ・バックヤード、京都府立図書館(Back Yard of Kyoto Prefectural Library)
新しき本の作家に逢ひし夜キョウト・タワーはふらんすの色
quand j'ai vu
un auteur de nouveaux livres,
Tour de Kyoto
a été comme
un drapeau tricolore
つゆくさのぬるるあしたの白露かな
dayflowers
wet with morning dew
on Hakuro(white dew)day
こほろぎのこゑの凝れる白露かな
(All Rights Reserved)
#
by snowdrop-nara
| 2024-09-07 12:07
| 秋
千本松原で千本ノック5(English translation of Bokusui's tanka5)
(本多稜「英文四行詩の牧水」:『牧水研究』27号巻頭論文より転載)
#
by snowdrop-nara
| 2024-09-01 16:01
| 詩
千本松原で千本ノック4(English translation of Bokusui's tanka4)
(8月24日早朝)
若山牧水は1885(明治18)年8月24日に東郷町坪谷で生まれました
おもひやるかのうす青き峡のおくにわれのうまれし朝のさびしさ
― 若山牧水『路上』
(2015年)
#
by snowdrop-nara
| 2024-08-25 05:25
| 詩
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