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ももさへづり*やまと編*cent chants d'une chouette (Yamato*Japon)

千本松原で千本ノック7(English translation of Bokusui's tanka7)

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若竹の伸びゆくごとく子ども等よ真直ぐにのばせ身をたましひを

若山牧水『黒松』


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嵐山(2018年5月)


children,
like growing young bamboos,
straighten 
your body and
your mind!

Black Pine by Bokusui Wakayama
tr. by snowdrop

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O little Children, grow up blithe
 And healthy, every one of you,
And be in heart and body lithe
 And upright as the young bamboo!

THE BLACK PINE by Bokusui,
tr. by Heihachiro Honda

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本多平八郎の四行英詩訳には見慣れない単語が出てきました。
blithe(朗らかな)とlithe(しなやかな)、
1行目と3行目の末尾で脚韻を踏み、
英詩に爽やかな明るさを添えています。
And の頭韻も目立ちますね。牧水の原歌にも a 音が多いです。
O little children, という雄弁な呼びかけ(little:いたいけな)、
healthy という語の追加から、子らへの愛情が伝わってきます。

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「各行8音節の押韻4行詩」(上記研究誌の巻頭論文による)という
制約が逆に、原歌にない単語を補う自由を翻訳者に与えたのですね。
ストイックなまでにシンプルなsnowdrop訳と比較してみてください。


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報国寺(鎌倉)

8月24日は牧水の誕生日でした。
明日9月17日は牧水の命日です。
10月には沼津牧水祭が開かれるとか。 
中学短歌コンクールの表彰もあるそうですよ。
子ども等の真直ぐな、あるいは中二病?的な短歌が披露されるでしょうか。

お祭りの予定地、幾山河歌碑(沼津千本松原)

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生前の牧水に寄す(8月24日詠)

たましひの熱きをのこの好けれども生き急ぐなよ酒は減らせよ


グッズ-お酒】文豪とアルケミスト 純米吟醸酒 若山牧水(参伍)特製キーホルダー付 | アニメイト

純米吟醸酒「若山牧水」(google search)

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# by snowdrop-nara | 2024-09-16 07:16 |

千本松原で千本ノック6(English translation of Bokusui's tanka6)

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白露二日目の朝露


つまらなさ手足にあふれふらふらとさまよひ歩く身体なりけり

若山牧水『白梅集』(大正6年)


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はまゆう(沼津千本松原)


feeling languor
flooding from my limbs,
I wander
with unsteady steps,
it IS my body

White Plum Blossoms by Bokusui Wakayama,
tr. by snowdrop

「つまらなさ」が次世代の中原中也の「倦怠」に通じるな気がして
languor という訳語を選んだ。
不規則な足取りでさまよう牧水。「なりけり」<詠嘆>に驚きを込め
「これがおれの体かよ」とでもいうニュアンスを大文字のISで表した。
つかみどころのない不安感は、アドレッセンスの余韻でもあろうか。
(参考)
  おとろへしわが神経にうちひびきゆふべしらじら雪ふりいでぬ
  若山牧水『路上』(明治44年)


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My limbs o'ercome by weariness,
I am a man without a role,
And wandering all but purposeless,
I am a thing without a soul

平八郎は「つまらなさ」を weariness と訳す。
languorよりも長期的で消耗した疲労感を指す語である。
「ふらふらと」から足取りよりも無目的さを読み取り
二行目と四行目は一対になってつまらなさを説明する。
(二行目の直訳)私は役割のない人間だ
(四行目の直訳)私は魂をもたぬ物体だ
思想的に行き詰まったかのような理知的な人間の悩み。
これが平八郎の牧水観なのかもしれない。
あるいは、英語という言語が引き寄せた論理性か。
身体がさまようのは、魂(soul)も役割もないからだという
理由付けは、英語圏の読者の方が理解し易そうである。

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平八郎の英文四行詩訳の引用元である本多稜論文は
平八郎訳を韻律の面から論じている。
本多氏によれば、「なりけり」の<詠嘆>は
各行八音節の定型と、abab の押韻で整えた
緊張感のある文体で表現されているという。
自らも張りのある音楽性豊かな歌を詠む歌人らしい論だ。


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牧水の書を見ると、まろやかで温かみのある書体である。
(「光る君へ」の若き日の道長の書体みたい?)
『牧水研究』27号には「書道専門書に見る牧水」(片山佳代子)
という論文も収載されている。
彼の文字は書道界でも好感をもって評価されているが、
独特の丸っこい文字は芸術としての「書」というより
筆と墨による「肉声」のように感じられる、とある。
牧水は変体仮名や連面体(続け書き)を用いず、
ひらがなを多用することでも知られている。

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『山櫻の歌』の一首(岩波文庫所収)を下図の掛軸と比較しよう。
に澄みぬる富士はみじか夜の起きに見るべかりけり」の
「紫」と「暁」が「むらさき」「あかつき」とひらかれている一方、
「みじか夜」の「みじか」は「」と漢字で書かれている。
その時々の気分で自由に漢字とひらがなを組み合わせていたようだ。
書に勢いが感じられるのは、そんな即興性にもよるのかもしれない。
なお、他の歌人でも雑誌と歌集では、漢字と仮名に違いがある事が多い。


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牧水は揮毫を通じて人と交流した(収入も得た)。
歌のやりとりを通じて心を通わせるように。
不安や感傷をうたっても湿っぽくなり過ぎず
朗々とした抒情性に満ちているのは、
牧水の魂(soul)の温度の高さゆえであろうか。
精神状態をこまやかに詠む姿勢は自発的というより、
窪田空穂の「心の微動」などの影響もあるかもしれない。

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鉦鳴らし信濃の国を行き行かばありしながらの母見るらむか 
空穂『まひる野』(1905年)

けふもまた心の鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く 
牧水『海の声』(1908年)

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わが庭のすがたを見せぬ鉦叩きチチ、ちち、父といつまでも鳴く 
snowdrop

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# by snowdrop-nara | 2024-09-12 19:12 |

ザ・バックヤード、京都府立図書館(Back Yard of Kyoto Prefectural Library)

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NHK番組「ザ・バックヤード」でも紹介された
京都府立図書館のバックヤードを見学しました(2023年)。
スマホ撮影のため、PCへのダウンロードが遅れてしまって…
最新の自動化書庫や地化書庫は、番組アーカイブでどうぞ。


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明治期の旧館外壁と、平成のガラス張りの新館が調和しています。
設計者の武田五一は、彼の留学した20世紀初頭の欧州のデザインを
古都京都に花開かせました。


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天井の浮彫装飾や扉の一部は入口付近にあります。
毎月第三水曜日午後の館内見学会で見られるのは、
貴賓室扉の装飾的な金具や


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木彫の柱頭や

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セセッション風の古い家具など。
武田五一は家具のデザインも手がけたのですね!
多才です~

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京都市電の古き車体に乗りこみて古き書物の作家に逢はん

let's get on an old tram
of Kyoto City Trams
to meet
writers of old books
in the old library!


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新しき本の作家に逢ひし夜キョウト・タワーはふらんすの色

quand j'ai vu
un auteur de nouveaux livres,
Tour de Kyoto
a été comme
un drapeau tricolore


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逢へずともバックヤードで声援をトリコロールのあかつき近し

bien que
je ne te voie pas
je t'encourage
c'est bientôt
le matin tricolore


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つゆくさのぬるるあしたの白露かな

dayflowers
wet with morning dew
on Hakuro(white dew)day


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こほろぎのこゑの凝れる白露かな


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# by snowdrop-nara | 2024-09-07 12:07 |

千本松原で千本ノック5(English translation of Bokusui's tanka5)

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棕櫚の主日(高山右近聖堂)



棕櫚の葉の菜の花の麦のゆれ光り揺れひかり永きひと日なりけり

― 若山牧水『砂丘』

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palm leaves,
canola flowers, and wheats
swaying and flickering,
flickering and swaying,
it has been a long day!

― Sand Dune by Wakayama Bokusui,
tr. by snowdrop

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小麦(wheat)(春日大社)


Lo. palmfans, rapeflowers, barley shine
And quiver and keep quivering,
Lit brightly by the summer sun, ―
Throughout the long day flickering

― SANDHILL by Wakayama Bokusui,
tr. by Heihachiroh Honda

(本多稜「英文四行詩の牧水」:『牧水研究』27号巻頭論文より転載)

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「原歌では第二句と第四句が一字の字余り、
翻訳では一行目が一音節多い九音節。
原歌では『ゆれ光り』のリフレイン、
翻訳では Lo. Lit が響き合う」
(同論文より引用)


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Lo. palmfans はラテン語ですが、棕櫚の学名ではなさそうです。
なぜここだけラテン語を用いたのかと思えば、Lit と響き合うとは!
日本で棕櫚を見ることはあまりありません。
棕櫚の主日には、蘇鉄の葉が代用されることが多いのです。


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大麦(barley)(近江八幡)


「麦」を本多平八郎は barley(大麦)と英訳しました。
たしかに日本では wheat(小麦)よりもよく見かけます。
麦酒の原材料になるからでしょうか。


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平八郎は各行八音節の四行詩という縛りもあって、
ゆれ光り揺れひかり」のリフレインを丁寧に訳しています:
(Lo. palmfans, rapeflowers, barley shine
And quiver and keep quivering,
Lit brightly by the summer sun, ―
Throughout the long day flickering

snowdropは二つの動詞を入れ替えながら繰り返すことで、
ひらがなと漢字の使い分けを表現してみました:
palm leaves,
canola flowers, and wheats
swaying and flickering,
flickering and swaying,
it has been a long day!

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おまけ*Bonus

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# by snowdrop-nara | 2024-09-01 16:01 |

千本松原で千本ノック4(English translation of Bokusui's tanka4)

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(8月24日早朝)


若山牧水は1885(明治18)年8月24日に東郷町坪谷で生まれました


おもひやるかのうす青き峡のおくにわれのうまれし朝のさびしさ 

― 若山牧水『路上』


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若山牧水記念館(沼津、2024年)


snowdropのフランス語短歌訳付きでどうぞ。


おもひやるかのうす青き峡のおくにわれのうまれし朝のさびしさ 牧水

j' imagine
la solitude
du matin
quand je suis né
au fond de la gorge pâle

tanka by Bokusui Wakayama(Dans la Rue), tr. by snowdrop

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(2017年9月早朝)


本日のsnowdrop英語短歌訳はこちら。


言葉に真実あれ、わがいのちの沈黙より滴りおつる短きことばに 

― 若山牧水『みなかみ』

let there be
truth in words,
in my few words
that trickle down from
the silence of my life

tanka by Bokusui Wakayama(Upstream), tr. by snowdrop


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いつものように、本多平八郎の英文四行詩訳と比べてみましょう。
『牧水研究』巻頭論文(上図)本多稜「英文四行詩の牧水」から引用しました。


言葉に真実あれ、わがいのちの沈黙より滴りおつる短きことばに 牧水

Let there be truth in words of mine, ―
Even their briefest be its sign,
As they emerge to play their role
From the deep silence of my soul

tanka by Bokusui(UPPER STREAM), tr. by Heihachiro Honda


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(2015年)


平八郎も "Let there be truth" で始めていますね!
これは「創世記」の「光あれ(Let there be light)」を踏まえた表現です。
「短き」の訳語は平八郎が brief(サイズ)、snowdropがfew(数量)です。
平八郎訳は接続詞 even (仮定の意)や as(理由の意)で各文節をつなげ
文脈の流れを作ります。英語のロジックを感じさせますね。
「いのち」を「soul(魂)」と訳すのもキリスト教的です。
(snowdropは life と訳しました)
「沈黙」の訳語は両者とも silence ですが、
平八郎が形容詞 deep(深い)を加えたのは、各行八音節の定型を守るため。
牧水の原歌は破調(十六六七八)なのですが、英文四行詩の形をキープ。


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思わぬところでキリスト教に出会ってしまいました。
葉月最後の主日の朝に。


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縹(はなだ)色うすべにみづいろの空を祈りのパレットとして

pale indigo,
pale pink, madder red,
light blue,
the sky is like a palette
of my prayers

bilingual tanka by snowdrop

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# by snowdrop-nara | 2024-08-25 05:25 |

万葉集から古今東西の文学やアートへ…… * ( ´艸`) * (all rights reserved)
by snowdrop-nara

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