人気ブログランキング |

ももさへづり*やまと編*cent chants d'une chouette (Yamato*Japon)

大仏さまのレシピ


 いつもお世話になっているまほろばさんから、大仏台座蓮弁の貴重な生写真のご提供がありました。美術書の写真に馴染んだ目には、素材(物質)そのものに肉迫したようなお写真が新鮮に映りました。かつて理系女子(リケジョ)にほのかな憧れを抱いていたsnowodropですが、少しは理系ぽい記事でも…。


a0332314_13153137.jpg


天平15年(743)、聖武天皇によって大仏造立の詔が発せられ、近江で起工された後、遷都に伴い天平17年(745)、平城京で造像が再開されました。天平勝宝4年(752)に開眼供養が行われた時には鍍金が間に合わず、顔面のみ金色の顔パック状態だったとか。光背などすべてが完成したのは天平宝字元年(757)頃でした。金色の身体、群青の螺髪など目にも彩な耀々しい大仏さまでした。


 The Emperor Shomu issued a rescript to build the Daibutsu (Great Buddha) in 743. The construction was begun in Shiga and resumed in Nara, the new capital (Heijokyo) in 745. At the time of the ceremony for opening the eyes of a Daibutsu (752), its gilding was not finished entirely, and only the face was gilt just like face pack. The whole statue including the nimbus was completed around 757. The golden body, blue spiral hairs, red lips… it was a colorful and mangnificent statue.



a0332314_13154668.jpg


<材料>

熟銅(精錬銅)500トン弱、白錫(不純物を含む錫)約8トン、練金約440キロ、水銀2トン強


<Material>

a little less than 500 ton of bronze ; around 8 ton oftin ; around 440 kilo of gold ; more than 2 ton of mercury



a0332314_13155580.jpg


<造り方>

巨大なため下から上へ、8段に分けて順次鋳造したと考えられています。推定される造像手法は次の通りです。


  1. 木材の支柱を縦横に組み、麻縄などを巻きつけ、原型の芯を造る。
  2. 原型の芯に土をかぶせる。荒土から粒子の細かい粘土を順に塗ってゆく。これを中型(なかご)または雄型という。
  3. 中型の土が十分乾燥してから、中型を外側から覆うような形で「外型」(雌型)を粘土で造る。
  4. 外型を適当な幅で割り、中型から外す。
  5. 外型の内面を火で焼く。
  6. 中型の表面を一定の厚み(=完成像の銅の厚み)で削る。
  7. 一度外した外型を再び組み合わせる。
  8. 炉を用いて銅を溶かし、外型と中型のすき間に流し込む。


鋳造後も表面の仕上げ、螺髪の取り付け、像表面の鍍金、光背の制作などの工程が続きます。


また、水銀と金の合金を塗布した後、水銀を加熱蒸散させる工法であったため、水銀蒸気を吸引した多くの人々が落命したといわれています。


<Process>

The statue was so great that it was supposed to be cast from the bottom to the top in eight grades.


1. Construct the wooden skeleton and wrap it with straw or clothes.


2Apply layers of rough and fine clay in succession.It is called Nakago(male mold)


3After drying the Nakago(male mold), make Sotogo(female mold) with clay.


4Slit the Sotogo and remove it from the Nakago.


5Burn the inside of the Nakago.


6Shave the surface of Nakago by the fixed thickness, which defines that of the bronze statue.


7Put the Sotogo and Nakago together again.


8. Melt bronze in a furnace and flow it into the space between Nakago and Sotogo.


After metal casting, the other processes follow : finishing of the surface, setting of the spiral hairs, gilding, making the nimbus, etc.


The method of amalgam gilding released the mercury vapor, which killed many people.





a0332314_13154668.jpg
(All Rights Reserved)











# by snowdrop-nara | 2015-01-27 19:23 | | Comments(2)

奈良の鹿ならでは…

a0332314_17144155.jpg
東大寺南大門


 奈良の鹿と人間の距離は、たとえば宮島の鹿との距離より近いようです。こんな風景が日常的というのは、奈良の鹿ならではかもしれません。でも、油断は禁物です。鹿はやはり野生動物、自分より背の低い幼児が相手だと、襲いかかることもあります。鹿同士でも、風邪を引いた仲間に噛みつく場面を見かけたことも。
 鹿は人にはなつかないので、ペットにはできないと言います。ラップランドのトナカイは家畜化されていますが…。



a0332314_09301114.jpg
鹿せんべい屋の前で待機する鹿たち



 鹿せんべいは小麦粉と米ヌカからできています。あくまでお八つで、主食の草の代わりにはなりません。人間の与える物は肉でもお菓子でも食べてしまうので、糞の性質が変わり、生態系に影響が出ているそうです。



a0332314_09354806.jpg
焼き芋屋のそばでも…


 お八つが貰えて奈良の鹿はいいな、と思っていましたが、彼らも苦労しています。食べ物の匂いにつられてビニール袋を食べてしまえば、胃袋が詰まって餓死します。交通事故や犬の襲撃とも隣り合わせです。奈良の鹿がよその鹿より小柄なのは、そんな暮らしの結果なのでしょう。



a0332314_09371164.jpg


 奈良の鹿は信号に合わせて横断歩道を渡る、と笑う人がいます。車の流れに合わせると自然にそうなるのでしょうが…一番後ろの鹿をご覧ください。ふり返って何かを見つめています。そこには散歩中の飼い犬の姿が…奈良の鹿ならではの苦労が、奇しくもワンショットに写りこみました。



a0332314_10052245.jpg


 鹿がとぐろを巻いています。草や葉など繊維質の多い食事をとる鹿は、多くの時間を反芻に費やします。退屈とは無縁の、シンプルで満ち足りた生き方かもしれません。厳しい環境に耐え自分らしく生きている鹿をまねびて、周りを広く深く見つめてゆければいいのですが…。

(2015,1,18)


a0332314_17494914.jpg
春日鹿曼荼羅 陽明文庫蔵 『日本美術と鹿』奈良県立美術館




この世にて最も気高き鹿をがまむ昔の絵師

の毛描きめでつつ



(このよにて もっとも けだかき しか おがまん むかしの えしの けがき めでつつ)















# by snowdrop-nara | 2015-01-18 08:12 | | Comments(1)

鹿の四季(角の変容)

a0332314_17243609.jpg



 春、奈良の鹿たちは草や花、木の枝葉など、食べられるものは何でも食べて栄養をつけます。下図の樹木は鹿に刈り込まれ(?)おかっぱ形になりました。ただし、馬酔木は馬や鹿の体を害するので食べ残されます。奈良の春日野や安芸の宮島に、馬酔木の森が多いのはそのためです。




a0332314_07203973.jpg
脚をのばしてお腹を見せるのは、無防備なまでにリラックスした状態



 秋の角きりで失われた鹿の角も、新しく生えてきます。初めは産毛が生えていて柔らかく、汗腺や神経、血も通っていて、袋角と呼ばれます。ちなみに、能面の「生成(なまなり)」(鬼に変わりかけた女性)にも袋角が生えています。


a0332314_09223387.jpg



















♥形がキュート




 初夏、鹿の毛は冬毛から夏毛に生え変わり、美しい鹿の子模様がつややかな背中を彩ります。鹿の子の柄は個体によって異なり、一生変わりません。



a0332314_16342288.jpg
まだ冬毛が抜け切っていない牡鹿


a0332314_16342928.jpg
爽やかな夏毛に衣更え


 この頃には、変わった形の角もよく見かけます。ユニコーンのように一角だったり、片方が縮れていたり、スヌーピーの耳のように垂れていたり…怪我や体調によるものだそうです。鎌倉時代の「春日権現験記絵巻」でも、片方の角が縮れた鹿がたまに描かれています(下の図版には含まれていません)。鹿の群れを変化をつけて描くために、よく観察したのでしょう。



a0332314_16410508.jpg
左より一歳(一又角)二歳(二又角)、三歳(三又角、一角獣風)の牡鹿


a0332314_16412777.jpg
四歳の牡鹿(四又角、スヌーピー風)


a0332314_08582506.jpg
春日権現験記絵巻 陽明文庫蔵  『日本美術と鹿』奈良県立美術館




a0332314_16571156.jpg



緑滴る御寺の杜に坐せる鹿千年の

刻を喰みかへしをり




(みどりしたたる みてらの もりに ざせる しか ちとせの ときを はみかえし おり)


 

a0332314_16453914.jpg


 奈良盆地の夏、鹿たちも木陰や水辺や軒下で涼を取ります。三月堂の縁の下にも沢山の鹿が…




a0332314_16495894.jpg


 大仏池を縄張りとする鹿たちは、さらに快適な避暑ライフを満喫できます。暑くなると水に入って体を冷やし、水面いっぱいに広がる菱の葉や実を貪る暮らし。生まれ変わるなら、大仏池の鹿がよさそうです。




a0332314_18283567.jpg



金いろの扇のかたちの黄葉し追ひて降

れる牝鹿の黒翳



(きんいろの おうぎの かたちの もみじばし おいて くだれる めじかの くろかげ)





  秋、鹿の角切りを免れた牡鹿が、固くなった角を振り立てて興福寺境内を闊歩しています。ときに牡鹿は雌を求めて鳴きます。職場で初めてこの声を耳にした時はぎょっとしました。それほどよく通る、激しく独特な声なのです。古歌でうたわれれば風流なのですが…



a0332314_16530462.jpg



さを鹿のこゑ霜野辺をつんざきて嬬の

ましろき胸毛響ます



(さおしかの こえ しものべを つんざきて  つまの ましろき むなげ とよます)






 牡鹿たちは「ぬた場」と呼ばれる沼地で泥を浴び、セックスアピールします。(これを汚れの染みついた老鹿と思いこんで餌を与える人を見ました。)牡同士が牝鹿をめぐって闘うこともよくあります。




a0332314_09483923.jpg


 こういう姿を見ても、鹿が野獣の一種だということが実感されます。彼らが野生を守りつつ、人の営みと調和した平穏な暮らしができることを願っています。


a0332314_09035085.jpg
角痕は牛乳瓶の蓋に似ている?

a0332314_09380683.jpg
(2015年1月17日撮影)

(All Rights Reserved)




 





# by snowdrop-nara | 2015-01-17 19:20 | | Comments(2)

子鹿の四季

a0332314_06445866.jpg



 奈良といえば鹿、近鉄奈良駅を出て東に歩き出せば、興福寺の伽藍とともに鹿の姿が見えてきます。鹿は春日の神の御使い、気品高くも愛らしい姿に人々は魅せられます。やがてその素顔が分かってくるのですが…
 かつて筆者は、ミニゼミ主催の鹿の生態調査に参加したことがあります。そこで学んだ事柄もふまえて、鹿たちの四季をたどってみましょう。まずは子鹿から…



a0332314_17075920.jpg


 霜の飛火野、冷たく固い芝を母鹿が一心に食んでいます。餌の少ない季節、昨春生まれたのであれば哺乳期間の過ぎている子鹿が、母親からお乳をもらっています。



霜露の草にてわが身養はむわが子養ふ乳や

多かれ


(しもつゆの くさにて わがみ やしなわむ わがこ やしなう ちちや おおかれ)




霜雪の芝冷たかるらむ子の頭突きに腹痛む

らむ汝母鹿よ


(しもゆきの しば つめたかるらむ この づつきに はら いたむらむ なれ ははじかよ)





a0332314_07212637.jpg



 緑の深まる春から夏は、子育てに適した季節です。奈良公園の木々や枝垂れ桜が、おかっぱ形に整っているのをご存知でしょうか。これは鹿が首を伸ばしたり、後脚で立ったりして、食べられるだけ食べた結果の樹形なのです。日本ではおかっぱ桜、インドのガンジス河口ではdeer lineと呼ばれます。
 


おかっぱ桜たくみに剪定したるのは

人にしあらず鹿の食欲

(おかっぱざくら たくみに せんてい したるのは ひとにし あらず しかの しょくよく)



a0332314_15510499.jpg


 盛夏には、子鹿のひとり歩きも時どき見られるようになります。四肢に緊張がみなぎり、ぎくしゃくした足取り。怖がらなくても大丈夫よ…とつぶやきつつシャッターを切ります。カシャコーン! ああ、当時のカメラは音が大きかった…飛んで逃げてしまいました。



緑濃き大仏池のdébutante怖づ怖づ歩む

かぼそき蹄



(みどりこき だいぶついけの デビュタント おずおず あゆむ かぼそき ひづめ)




a0332314_16065149.jpg

 

 1994年の秋頃から、5月生まれの白い子鹿が話題を呼んでいました。春日山をのぞむ錦秋の境内に、神の化身のような灰白色の子鹿…じつは白い獣は突然変異の一種で、体は弱く、孤立しがちなうえ、過度の注目によるストレスも多くて短命なのだそうです。


a0332314_16080729.jpg

春日鹿曼荼羅 奈良国立博物館 『日本美術と鹿』奈良県立美術館(1998)



春日神乗せし重みに其のいのち費やせるか

や真白き仔鹿


(かすがのかみ のせし おもみに そのいのち ついやせるかや ましろき こじか)




a0332314_16053062.jpg


 子鹿たちのすこやかな成長を祈りつつ…(「鹿の四季」に続く)。

 (2015,1,17)



a0332314_09063836.jpg








# by snowdrop-nara | 2015-01-17 10:34 | | Comments(0)

鹿寄せと田園交響楽


 奈良公園の飛火野では、毎冬、餌の乏しくなった鹿たちを呼び集めて餌を与える「鹿寄せ」が行われます。1994年には1月にも見られました。


a0332314_16583970.jpg



飛火野にナチュラルホルンの田園の響けば

鹿のrun-hopping


(とぶひのに なちゅらるほるんの でんえんの ひびけば しかの ラン ホッピング)



a0332314_17035621.jpg



 鹿の愛護協会の方が、ナチュラルホルンでベートーヴェンの田園交響楽の一節を吹き鳴らすと、鹿たちがわらわらと集まってきます。
 もっとも、ホルンがなくても、餌を貰えそうだと思えば何十頭もの鹿たちが群がってくるのですが…


a0332314_17124571.jpg



雪消沢の辺に残せるわが車

餌を期したる鹿に纏かれき


(ゆきげのさわの ほとりに のこせる わがくるま えさを ごしたる しかに まかれき)




a0332314_17080575.jpg


牝鹿の尾さか立ち白し餌食みつつ身構へた

るは獣の本能

(めじかの お さかだち しろし えさ はみつつ みがまえたるは けものの ほんのう)




a0332314_17095745.jpg

春日野尓 粟種有世伐 待鹿尓 継而行益乎 社師怨焉

春日野に粟蒔けりせば鹿待ちに継ぎて行かましを社し怨めし

(春日野に粟を蒔いてあったら、鹿を待ち伏せしに絶えず行くのだが、神の社が怨めしい)(佐伯赤麻呂 萬葉集巻405




春日野に蒔けるは粟か一粒をあらそひ闘ふ

牡鹿らもあり


(かすがのに まけるは あわか ひとつぶを あらそい たたかう おじからも あり)


1994.1.7

















# by snowdrop-nara | 2015-01-12 06:57 | | Comments(0)

戒壇院の四天王像(二つの時代の対話)

a0332314_06545779.jpg
二月堂参道


 法華堂(三月堂)を出て二月堂の前を通り、大仏殿の裏の坂道を戒壇院へと下ります。戒壇院四天王像をテーマに卒業論文を書いていた頃、このしずかな道を何度往復したでしょう。
 天平時代の戒壇院は失われ、四天王像も他の堂から移安されましたが、これらの塑像には法華堂の日光・月光菩薩などときわめて近い様式が認められます。
 四天王の目には黒い石が嵌めこまれています。のちの鎌倉時代には、ガラスを用いた玉眼という技法が発達するのですが、天平時代の石の瞳にも十分なリアリティがあります。


a0332314_07044801.jpg
持国天


黒き石ふたつ光れり玉よりもきよく遥けき

眼力


(くろき いし ふたつ ひかれり ぎょくよりも きよく はるけき まなこの ちから)




a0332314_07050365.jpg
増長天


 鎌倉時代の仏師運慶が若き日に刻んだ大日如来像が、円成寺に伝わっています。その腰のしなやかな曲線を「ふるいつきたくなるような」と評したのが、『奈良六大寺大観』の著者のお一人でした。およそ二十年前の集中講義の思い出です。戒壇院の四天王の洗練されたプロポーションに、運慶もこれらの像を見ていたはずだと思えてきます。



ふるひつきたくなるやうな運慶の如来の腰

のみなもと此処に


(ふるいつきたくなる ような うんけいの にょらいの こしの みなもと ここに)




a0332314_06471163.jpg
広目天


天平の土のほとけの白肌の雲母ほのかに汗

あえたるや


(てんぴょうの つちの ほとけの しらはだの きらら ほのかに あせあえたるや)




a0332314_06465363.jpg
多聞天


うつくしきもののふ腕さしあげてひとさし

舞へる調伏の楽


(うつくしき もののふ かいな さしあげて ひとさし まえる ちょうぶくの がく)





モデリングあらはに曝す白き像大理石の

ヌードにも似て


(もでりんぐ あらわに さらす しろき ぞう だいりせきの ぬーどにも にて)












# by snowdrop-nara | 2015-01-11 06:40 | | Comments(2)

法華堂の塑像(美しさと儚さと)

a0332314_11301486.jpg


 東大寺の天平塑像群のうち唯一、造像当初の色彩をとどめているのが、執金剛神像です。ふだんは本尊不空羂索観音像の背後の厨子に秘され、年に一度開扉されます(12月16日「良弁忌」)。この写真からも、左袖の朱の地色と宝相華文、腰甲の札(さね)の金箔などが鮮やかに残るのが分かります。



ヘラクレスのおもかげ残る憤怒相東の國の

厨子に至れり


(へらくれすの おもかげ のこる ふんぬそう ひむがしの くにの ずしに いたれり)



朱の袖よりあらはに伸ぶるみ腕のくちなは

のごと太き血の筋


(しゅの そでより あらわに のぶる みかいなの くちなわのごと ふとき ちの すじ)



a0332314_10533629.jpg


いにしへの繧繝の彩ただひとり残せる神の

さびしからずや


(いにしえの うんげんの たみ ただ ひとり のこせる かみの さびしからずや)




a0332314_11470593.jpg


 一方、本尊の両脇にひっそり佇む日光・月光菩薩像はほとんど白一色に見えます。とくに月光菩薩は、引き締まった面差しや左右相称性を強調した衣などによって、ひときわ静謐な印象を与えます。




貝殻のかたちの白き髻を闕くことのなき月

し照らせり


(かいがらの かたちの しろき もとどりを かくことのなき つきし てらせり)




蓮蕾のごとく合はする掌いまだふふめど透

きまほの見ゆ


(れんらいの ごとく あわする たなごころ いまだ ふふめど すきま ほのみゆ)




a0332314_06110241.jpg


 弁財天、吉祥天像(写真上)の損傷は痛ましい限りです。紙すさや雲母を混ぜた塑土という材質が、いかにもろいものかを物語っています。ひるがえって、執金剛神像にあれほど多くの彩色が残っているのは何と稀有なことか。これらの塑像群を、1200年以上にわたり伝えてくださった、先人達の尽力に感謝を捧げます。




春あさき倭の野邉の唐梅のもろき膚ぞなほ

も清けき


(はる あさき やまとの のべの からうめの もろき はだえぞ なおも さやけき)  



a0332314_06245745.jpg

「まほろば写真俳句」より










# by snowdrop-nara | 2015-01-10 06:28 | | Comments(2)

法華堂の乾漆像(天平へのタイムスリップ)

a0332314_10580806.jpg
『名宝日本の美術』(小学館)
a0332314_10574146.jpg


 東大寺法華堂(三月堂)では、かつて天平時代の塑像と乾漆像が一堂に並んでいました。夏でもひんやりした御堂に足を踏み入れると、一瞬にして天平の空気に包まれ、八世紀の奈良へ旅立つことができました(ただし、すべての仏像が当初よりここに安置されていたわけではありません)。


a0332314_11032683.jpg
不空羂索観音像



羂索もて人たぐり寄す観音の肩にまとへる

鹿皮ごろも


(けんさくもて ひと たぐりよす かんのんの かたに まとえる しかかわ ごろも)




葡萄色の漆の面に刻まれし三つのまなこ花

辨のごとく


(えびいろの うるしの おもに きざまれし みっつの まなこ かべんの ごとく)




a0332314_08575721.jpg
『名宝日本の美術』(小学館)


 不空羂索観音像の宝冠だけが奈良の博物館で展示されたこともあります。銀製の化仏を中心に、翡翠、琥珀、水晶、真珠、玻璃玉などで飾られた豪華な冠は、それだけでいつまでも鑑賞していたくなる美しさです。この冠と正倉院宝物のガラスとを参考に、アクセサリーを作ったことも…


a0332314_11055922.jpg



 乾漆造の金剛力士像や四天王像には、当初の彩色が比較的よく残っています。宝相華唐草、雲気文など、ギャラリースコープをのぞいてもなかなか見えませんでしたが、『奈良六大寺大観』の写真で、いにしえの華やかさを偲ぶことは可能でした。



a0332314_09360393.jpg
広目天像



御甲を彩り纏ける霊芝雲さわらびいろに天

へいざなふ


(おんこうを いろどり まける れいしうん さわらびいろに てんへ いざなう)



















# by snowdrop-nara | 2015-01-10 05:50 | | Comments(0)

雪の東大寺

 
 2015年の元旦、奈良は雪に包まれています。およそ二十年前の東大寺の雪が思い出されます。
 東大寺には塑像という、雪のように白い土の仏像がたくさんあります。戒壇院はもとより、当時は法華堂にも、日光月光菩薩像をはじめとする白い仏像がひっそりと佇んでいました。はかない土の仏たちはその多くが、いまは天平時代の御堂を離れ、境内の博物館に移されています



a0332314_16361274.jpg



大佛殿参道埋める白雪に朱き雪傘

にしき絵のごと



(だいぶつでん さんどう うめる しらゆきに あかき ゆきがさ にしきえの ごと)



a0332314_16425721.jpg



三月堂ふたつの時代の屋根のうへひと連な

りに雪のふりつむ


(さんがつどう ふたつの じだいの やねの うえ ひとつらなりに ゆきの ふりつむ)


注:法華堂(三月堂)は奈良時代の正堂と鎌倉時代の礼堂とからなる



a0332314_16463656.jpg

二月堂から大仏殿、東大寺境内を望む


a0332314_16473722.jpg

戒壇院


白き段ふみつつ思ふいにしへの御堂のほと

けの雪のはだへを


(しろき だん ふみつつ おもう いにしえの みどうの ほとけの ゆきの はだえを)





a0332314_16502385.jpg

大仏殿西面

(1994年2月12日撮影)

(All Rights Reserved)













# by snowdrop-nara | 2015-01-02 15:25 | | Comments(1)

雪の興福寺と浮見堂

a0332314_17091465.jpg


吾屋前之 冬木乃上尓 零雪乎 梅花香常 打見都流香裳

(我が宿の冬木の上に降る雪を梅の花かとうち見つるかも)

(我が庭の冬木の上に降る雪を、梅の花かとつい見まちがえた)

(巨勢宿奈麻呂 萬葉集巻八1645




五重塔にかいそひ立てる桜樹の

つねより白くおもき花房



(ごじゅうのとうに かいそい たてる さくらぎの つねより しろく おもき はなぶさ)





君がため手折るべくもなき雪の枝清けき

香だに歌ひとどけむ



(きみがため たおるべくも なき ゆきの えだ さやけき かだに うたい とどけむ)





a0332314_17081790.jpg




浮見堂けふひとときは雪見堂白き鷺池みづ

鏡として



(うきみどう きょう ひとときは ゆきみどう しろき さぎいけ みずかがみと して)





池邊乃 松之末葉尓 零雪者 五百重零敷明日左倍母将見

(池の辺の松の末葉に降る雪は五百重降り敷け明日さへも見む)

(池の辺の松の梢の葉に降る雪は、幾重にも降り積もれ。明日もまた見よう)(萬葉集巻八1650



池の辺の上つ枝下つ枝の五百重なし夜半に

築くらむ樹氷の宮居



(いけの への ほづえ しづえの いおえなし よわに つくらむ じゅひょうの みやい)



(1996,2,18)
















# by snowdrop-nara | 2015-01-01 21:51 | | Comments(0)

雪の大仏池と飛火野

a0332314_16554661.jpg
正倉院勅使門




雪しづくにかじかみたるや馬酔木の莟

よさく咲け雪より白く


(ゆきしずくに かじかみたるや あせんぼの つぼみよ さく さけ ゆきより しろく)




a0332314_16550538.jpg

秋付者 尾花我上尓 置露乃 応消毛吾者 所念香聞

秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも

(秋らしくなると尾花の上に置く露のように、身も消えてしまいそうに私は思われます) (日置長枝娘子 萬葉集巻八1564


火のいろの馬酔木の蕾におく雪の消ぬべく

も吾は想ひけるかも


(ひの いろの あしびの つぼみに おく ゆきの けぬべくも あは おもいけるかも)




a0332314_17003616.jpg



大仏池のほとりに立てる雪ぼとけ松ぼっく

りを襟どめにして


(だいぶついけの ほとりに たてる ゆきぼとけ まつぼっくりを えりどめに して)



a0332314_17072923.jpg



飛火野の雪に足ひき歩みゆかむ冬の旅て

ふリート誦しつつ


(とぶひのの ゆきに あしひき あゆみゆかむ ふゆの たび ちょう りーと ずしつつ)



a0332314_09040386.jpg

a0332314_09042878.jpg
春日権現験記絵巻 三の丸尚蔵館



絵巻物の雪の風景たちあがり吾を昔

に攫はむとせり


(えまきものの ゆきの ふうけい たちあがり われを むかしに さらわむと せり)





(1994.2.12)














# by snowdrop-nara | 2015-01-01 17:35 | | Comments(1)

大仏池の四季

a0332314_22252181.jpg
a0332314_22253628.jpg
a0332314_22254317.jpg
a0332314_22261260.jpg


 大仏の東大寺、阿修羅の興福寺、神鹿あそぶ春日大社…これらの寺社をつつむ奈良公園の一角に、数年間通っていました。アート、ときどきゴガクのフリータイムの仕事のかたわら、行き帰りや昼休みに写真を撮りながら。

 父の一眼レフカメラNIKON F401はずしりと重く、小さいカバンだとぷっくり膨らんでしまいました。撮りためたフィルムを現像に出して、後日それを受け取るときの胸の動悸!手ぶれはなかったか、露出補正の具合は…フィルムが空回りして一枚も写っていない時も。デジタルミラーレスなど想像もできなかった、20数年前の写真女子ライフでありました。

 本棚の片隅に眠っていたネガ・ポジフィルム、30年を経過すると急速に劣化すると聞き、あわててCD-romに移しました。その写真の一部に、拙い歌を添えてブログを作ることにしました。アナログ時代の奈良をご一緒に散策してみませんか。ときには万葉の時代にまで時空旅行しながら…



大仏池のほとりで萬葉集を誦す

正午のひかりと雀を友に


(だいぶついけの ほとりで ずする まんようしゅう まひるの ひかりと すずめを ともに)





本文中に引用する万葉集は『新日本古典文学大系 萬葉集』、仏像の写真は断りがない限り『奈良六大寺大観』『大和古寺大観』(すべて岩波書店)に依拠しています。

このブログに掲載された短歌・俳句の使用を禁じます。











# by snowdrop-nara | 2015-01-01 06:33 | | Comments(3)

万葉集から古今東西の文学やアートへ…… * ( ´艸`) * (all rights reserved)
by snowdrop-nara
プロフィールを見る
更新通知を受け取る

カテゴリ

最新のコメント

*sakuraさん、こん..
by snowdrop-nara at 21:09
こんにちは^^ お彼岸..
by teineinakurasi at 16:43
*naokoさん ク..
by snowdrop-nara at 18:50
ヤドリギでつなぐ思い出や..
by milletti_naoko at 05:43
*pikoさん 倉敷ガ..
by snowdrop-nara at 18:42
倉敷ガラスって知りません..
by pikorin77jp at 09:30
*naokoさん 日本..
by snowdrop-nara at 06:17
細部までこだわって巧みに..
by milletti_naoko at 23:43
*はぴさんはやっぱり優し..
by snowdrop-nara at 17:46
*pikoさん 友だち..
by snowdrop-nara at 17:40
*さおりさん アドベン..
by snowdrop-nara at 17:35
こんばんは からくり時..
by happysweet1205 at 22:23
宵々山にいかれたのですか..
by pikorin77jp at 14:53
こんにちは~♪ よくで..
by boheme0506image at 14:08
*tad64さん ご訪..
by snowdrop-nara at 07:16
ぴこさんの所からお邪魔し..
by tad64 at 12:21
*1go1exさん 元..
by snowdrop-nara at 18:03
『元永本古今和歌集』、き..
by 1go1ex at 08:13
*tanetさん、すでに..
by snowdrop-nara at 17:35
*tanetさん 赤い..
by snowdrop-nara at 07:32

最新のトラックバック

楽しい万葉集

http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/nature.html

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。