蟬丸をたずねて 下(Where are Semimaru's shrines?II)
走井(はしりい)餅*緑の滴形の餅は井戸水を表しています
蝉丸の姉、逆髪は井戸水に己が乱れ髪を映して嘆くのです
逢坂の関の清水に影見えて 今や引らん望月の 駒の歩みも近づくか
水も走井の影見れば 我ながらあさましや 髪は荊(おどろ)を戴き
黛も乱れ黒みて げに逆髪の影映る 水を鏡と夕波の 現無の我姿や
蝉丸の姉、逆髪(さかがみ)は髪が逆立つ病の姫(右)、
心も乱れ諸方を放浪の末、京、山科から逢坂へ ―
父帝から隠棲させられた盲目の弟(左)と巡り会うのは宿命か。
11月下旬の小春日、
蟬丸神社上社の石段は百段近いので下からパチリ。
猿田彦命に頭を下げつつ通過。
ほどなく、蟬丸の詠った逢坂の関址に着く。
歩道はあるもののトラックに追い越され続けると疲れる。
三つ目の蟬丸神社(中社)にお参りしたら電車に乗ろう。
社の鳥居を探すが、鰻のオブジェや鰻屋の駐車場ばかり。
いちどきに十個を食ぶがせいぜいと銀杏ひろふ媼のわらふ
能舞台の床いちめんの真四角の紙片のひとつひとつが小雪
ココログblog「ももさへづり」に関連記事があります→👼(天使をクリック)
原文の朗読はこちら(上記の場面は26:30頃~)↓
ユルスナール「源氏の君の最後の恋」のラストは
逆髪のイメージかもしれない。
作家はこの能を知っていただろうか?
大谷茶屋
閑話休題。
走井のある月心寺(最寄り駅は大谷)は拝観予約が出来なかった。
電話がつながらないのだ。
どのみち、一人では受け付けてもらえなかっただろうけれど。
山科で乗換えて京都へ。
見慣れた山科の山並みに逆髪の面影が重なる。
こうやって歌枕を身ぬちに取り込んでゆく。
おまけ*Bonus
関蟬丸神社下社の鳥居すれすれを走る京阪電車。
もひとつ、おまけ
逆髪の金剛力士(東大寺法華堂)
怒髪天を衝く(google search)
(All Rights Reserved)
#
by snowdrop-nara
| 2023-12-15 12:15
| 神
蟬丸をたずねて 上(Where are Semimaru's shrines?I)
幾つもの歌碑がある中で、蟬丸の和歌をご紹介しよう。
百人一首に収められた有名な一首だが
能「蟬丸」を観た後ではあはれが増す。
「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」
#
by snowdrop-nara
| 2023-12-10 08:10
| 神
公孫樹の錦(nishiki silk of ginkgo leaves)
銀杏の干菓子はいくつ?― 答えは二つ(2016年)
石の鳥居(左)をくぐると、右手に木の鳥居が見えてきます。
東大寺手向山八幡宮の歌碑
「このたびは幣もとりあえず手向山もみぢの錦神のまにまに 菅原道真」
霜月の朝、思い立って取るものもとりあえず訪ねた八幡宮。
手向山は銀杏と楓のもみぢの錦でした。来てよかった。
聖地の力が心身に流れ込んでくるようです。
かなしみも忘れさうなる黄金(こがね)綾いちやうは唐(から)より渡りし樹木
gold silk that
makes me forget my sadness
the ginkgo tree is
said to have been brought
from China to Japan
聖霊の鳩を照らすやからくれなゐ
is it
a dove of holy spirit that
red maple leaves illuminate?
空のあを水のみづいろ銀杏の黄い
いづこへ沈むもいづこへ飛ぶも
白鷺や雀の飛び交う大仏池のほとりで
萬葉集に親しんだ若き日のsnowdrop
その背中が見えるよう。
麺麭切れをねらふ雀は三度目を飛び来たるなり弾丸のごと
月ふたつわがたましひを充電す
小春日の大仏池のほとりにて歌を詠めずに本読みしわれ
during Indian summer
at the edge of Daibutsu Pond
every year
I used to read Man'yoshu
in place of composing tanka
短歌を詠めるようになったのは二十数年後のことでした。
(All Rights Reserved)
#
by snowdrop-nara
| 2023-12-05 05:05
| 神
紫式部をたずねて(Where is Lady Purple?)
なき人をしのぶる宵の村雨に濡れてや来つる山ほととぎす
紫式部
源氏物語の作中歌は、登場人物なりきり代詠といえる。
#
by snowdrop-nara
| 2023-11-28 20:28
| 秋
旅について 下(Why each of us travelled to the West?2)
やまとなら石地蔵なり聖母子像
美といえば、
mon 空いろ小花
決して外交的でないのに、何度か大きな旅ができたのは、
留学や旅行に積極的な友の誘いがあったからだ。
自分で選択した海外の旅は、モンゴルとフランスくらいだろうか。
イラン旅行を、ペルシア語学習後にと延期したのが痛恨事。
比較的安全な地域ばかりを旅してきたけれど
現地の病院に駆け込んでは、傷害保険をしっかり活用した。
抹香鯨のような車*矢筈文がお気に入りでした
北欧・英国滞在後、半年ぶりに帰国すると、
留守中に自家用車が駐車場で大破していたと聞かされた。
「きっと身代わりになってくれたのよ」という母の言葉に
背筋が寒くなった。
たしかに病がちだったし、車に轢かれそうになったことも…
旅を振り返るのは懐かしむためというより、土地の記憶を新たにするため。
(若いころの自分は探すほどのものでもない)
たとえば、星(Stella)という名のエジプトのラガービールに改めて注目。
エジプトにおける五芒星は竈(かまど)を守るシンボルであったらしい。→★
ちなみにサッポロビールの赤い星は、開拓使の「北辰旗」の星印に由来する。
サッポロラガービール(赤星)★ 映画「東京物語」(録画映像を撮影)
札幌とくれば、利尻礼文まで足を延ばそうか。
船旅は体の不自由な人の行動の幅を広げてくれる。
John Wayne風の人形をお土産に…(海の見える図書室にて)
三十年(みそとせ)前マッコウクジラが好きだつた理由を忘れまた思ひ出す
白秋の『フレップトリップ』や賢治の「オホーツク挽歌」とともに
数年前、北の海を旅した。家族の古希祝いのために。
樺太まで足を延ばせる時代なら良かったのだけれど。
歌を詠むために旅したことは無いこれから先は分からないけど
I have not yet
travelled so as to compose
tanka
I do not know
whether to do so in the future
友よりの便りの柄長なつかしき
a bird
on my friend's postcard
calls dejavu
旅といふ流鏑馬のなか放つ矢は美の心臓を射抜いたらうか
Did your arrows
shot during travels
like yabusame:
the art shooting arrows on horseback,
pierce the beauty's heart?
(「美しいキモノ」2000年代春号)
刺繍職人は目を酷使するので諦めました。
わたしにも登れるかしらモンブラン泣けとばかりに空は青くて
黄金千貫のモンブラン(「三鷹歌農書」よりお借りしました)
(google search)
「子供のことば」(「ももさえずり*紀行編」)(11月25日公開)へつづく
To be continued。。。
(All Rights Reserved)
#
by snowdrop-nara
| 2023-11-21 05:21
| 詩
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